by 鶴田 彬、2025.3.17
前回のブログでは、海外のビジネスパーソン向けに、日本の消費者は、食べ物や飲み物に控えめで自然な甘さを求め、過剰な砂糖を避けていることについて説明し、そのブログを日本語でも共有した。その中で、中国では主流の飲み物として定着化した新式茶・ニュースタイルティーのフルーツティー、とりわけHEYTEAのような高品質・健康志向のアプローチを取るブランドは、日本の消費者に歓迎される可能性があることを示唆した。そんな中、2025年2月、HEYTEAは大阪のDOTONプラザに日本初の店舗をオープンした。今回は、HEYTEAの紹介と日本でのマーケティング戦略について分析してみようと思う。(前回のブログはこちらから:“砂糖は嫌いだが甘さは好き”-ワガママな日本人消費者の好みにどう対応するか)

Figure 1. 日本初のHEYTEAストアは大阪にオープン
1. HEYTEAについて

Figure 2.HEYTEAの商品イメージ
日本人の多くはこのHEYTEAというブランドに馴染みがないだろうが、中国ではHEYTEAは新式茶・ニュースタイルティーのリーダーとして、市場に君臨しているといっても過言ではない。若手創業者の聂云宸(Nie Yunchen)氏によって、2012年より広東省江門市からスタートした(当時の名前は皇茶)中国茶をモダンスタイルで提供するブランドであり、パウダーなどは使用せず、店舗で茶葉からお茶を入れ良質の商品を提供することに重点を置いている。当初のターゲット層としては、20~30歳、特に20~25歳ホワイトカラーワーカーが想定されており、開発されたフルーツとチーズフォームをブレンドしたチーズティーが若い女性を中心に口コミで広がり2017年より店舗数を伸ばし一大ブームを巻き起こし、今や新式茶会のスターバックスと見られるほどに中国の市場に定着したブランドである。(余談だがCEO聂氏がスターバックスをベンチマークしていない点も面白い点である。)

Figure 3. HEYTEAのチーズティーは、中国で一大ブームを巻き起こし行列を産んだ
HEYTEAのブランドは、“Tea of Inspiration(灵感之茶)”をコンセプトに、文化体験を提供するブランドと位置付けることができ、現代と伝統の融合された革新的な商品・ストアデザインが若者に評判を受けている。また、一部で。「ミルクティーで時間を無駄にするデザイン会社」と冗談めかして呼ばれることもあり、マーケティングコンテンツのデザインに中国の美学、禅、ミニマリズム、レトロな要素を取り入れることで、幅広い若い消費者にアピールすることに成功し、現在、総店舗数は4,000店を超えている。また、最近、クオリティを維持するために2022年に開始したフランチャイズ展開を廃止したことでも話題に上がっている。

Figure 4. HEYTEAの革新的な商品ラインナップ
出典:HEYTEA GO WeChatミニプログラム
商品メニューを見れば、タピオカミルクティーに加え、チーズティーやフルーツティーなどバラエティに富み、HEYTEAの強みの一つが商品開発にあることがわかる。そんな、これまで日本市場で見られることとの無かったと言えるクオリティ重視の新式茶HEYTEAが日本で受け入れられる土壌があるのか見ていこう。
2. 中国市場とは勝手が違う
2-1.ライバルであるコーヒー文化の浸透度が異なる
コーヒー文化が広まり、浸透度が深ければ深いほど、新式茶の市場参入は困難になる可能性があり、中国市場と日本市場の大きな違いはコーヒー文化の普及度、そのヒストリーにあるだろう。日本の消費者は、1960年代からコーヒーと長く付き合ってきたため、新式茶が日本で定着するのはより困難と考えられる。以前のブログ中国カフェチェーンの海外進出“Grab-and-Go”でシェア拡大を狙えでも述べたが、上海では、スターバックスがすでに市場に参入していたがコーヒーの市場への浸透度はLuckin Coffee登場まではそこまで強くなかったと感じており、私の教室では一点点のようなバブルティーがデリバリーで注文をよくされていた。(中国は、1999年に北京からスターバックスに参入したが、コーヒーをデイリーで飲み始めたのは、Luckin Coffeeなどが台頭してきた2020年前後と言えるだろう。)その後、Luckin Coffeeの登場で市場は変容していくのだが。上海の消費者の体感としては、Luckinのようなコーヒーチェーンと新式茶のスタンドがほぼ同時に登場したイメージであり、日本とは市場参入時の状況が異なる。HEYTEAは日本市場では、よりスターバックスやブルーボトルなどのカフェとの厳しい競争に直面することになるだろう。その点において、日本市場への参入は、中国や他のアジア地域よりも困難であるように思われ、ヨーロッパなどの西洋市場に近いものと考えられる。
2-2.そもそも味の好みが違う
中国人消費者と比べると、殊更お茶に関しては、日本の消費者は伝統的または単調な好みを持っていることが多く、中国の消費者ほど複雑にブレンドされた味に慣れていないと懸念されている。最近は上海で、多くの消費者が、烏龍茶ベース・ジャスミン茶ベースのミルクティーを飲むのだが、紅茶を除く中国茶や日本茶に牛乳や砂糖を入れて飲もうと言う習慣は、多くの日本人は持っていないと言えるだろう。そして、これは、チーズティーなどの革新的な製品を日本市場に導入する際に課題となる可能性がある。上海で、私は日本人の友人と初めてチーズティーに出会ったとき、最初はためらいを感じ、そのアイデアに少し違和感を覚えたし、チーズティーを自身のチョイスにすることから遠ざけていた。後に、中国人の友人の勧めで試してみると(私があまりにも躊躇うので身叶えて奢ってくれた。)、実際には非常においしいことがわかり、すぐにファンになったのが、この最初に商品をトライさせるコスト、他商品からこちらを選択させるスイッチングコストが日本では高くなるだろう。

Figure 5. Luckin Coffeeのジャスミンミルクティー(鲜萃轻轻茉莉)
2-3. 消費シナリオの違い
以前の記事: 中国カフェチェーンの海外進出“Grab-and-Go”でシェア拡大を狙えでも詳細に述べているように、デジタル決済によるGrab-and-Goなどのテイクアウトオプションやデリバリーオプションはまだ中国ほど普及していない。テイクアウトサービスを利用する際の障壁の1つは、道端にゴミ箱が少ないことが挙げられよう。また、人件費が高いため配送費用が高額になることもあって、中国の消費者ほどお茶の宅配サービスに馴染みがない。授業中にこっそりアプリでドリンクを注文して休憩時間にデリバリーを受け取るといった選択肢を持つ中国の学生に対して、日本の学生はキャンパスのどこでも目にする自動販売機やコンビニがメインオプションになっているという違いがある。
また、店舗インフラという点でも、日本人の多くは一軒家に住んでおり、中国の小区のようなコミュニティビルに住んでいるわけではないので、住宅街でティースタンドを開くのは中国よりも難しい可能性が高い。上海だと家からコンビニよりカフェやティースタンドの方が距離が近いと言うことは起こり得るのだが、日本だとスターバックスのようなカフェはショッピングモールや駅の近くに店舗を構え、デリバリーも充実していないので、日本では消費者と商品の間に物理的および心理的な距離がよりあると言えよう。休みの日の午前中に家にいながら新式茶をデリバリーで届けてもらう、最寄りのスタンドまで買いに行くと言うのは割と中国ではあるが、日本で週末に家でスターバックスを飲もうという発想はあまり持たないだろう。

Figure 6. 中国では、このようにアパートの下には蜜雪冰城やCoCo、Luckin Coffeeなどのコーヒー・ティースタンドが入っており、デリバリーも充実しているため消費者との距離が非常に近い。
(*HEYTEAがこういった古い建物に入るケースはあまり見られず、ブランディング上考えにくいが。)
2-4.今が参入の時
厳しいCOVID-19規制・ロックダウンにより、流行したタピオカティースタンドは大幅に減少したが、以前のタピオカブームとは異なり、いくつかのタピオカティーブランドはこの流行を通じて日本市場に定着した。ゴンチャは178店舗、The Alleyは11店舗、CoCoは6店舗を日本に展開している。奈雪の茶は日本市場から撤退したが、昨今の蜜雪氷城(MIXUE Bingcheng)とHEYTEAの最近の参入は、各ブランドが今が日本の新式茶市場に参入する好機であると捉えているのだろう。日本への中国人観光客数の増加・回復を考慮すると、彼らをターゲットにすることで、これらのブランドは一定の収益を得ることもできる。(海外市場でホームカントリーの消費者をターゲットにするマーケティングについてはこちらの記事を参照ください。:海外在住外国人コミュニティ:“ディアスポラ”は海外進出の際のゲートウェイになる )
レモンティーやピーチティーなどの商品は日本のコンビニエンスストアの棚で見つけることはできるが、フルーツティーには実際のフルーツの果肉はなく、または少なく、パッケージも比較的シンプルと言えよう。対照的に、HEYTEAのフルーツティーや他のブランドの同様の製品は、外観は魅力的と言え、日本市場でかなり競争力を持ちうる。HEYTEAのフルーツティーはSNS映えするので、日本の消費者が写真を撮ってInstagramに投稿しバズを産み始める可能性は大いにある。

Figure 7.フォトジェニックなHEYTEAのドリンク(出典:HEYTEA JapanのXアカウントより)
ゴンチャやCoCoなど既存ブランドはすでに日本でフルーツティーの販売を開始している、そして先月ついにHEYTEAが大阪に店舗をオープンした。前置きが長くなったが、大阪のHEYTEAストアを見ていくこととしよう。
3. 日本初、HEYTEA大阪店を紐解く
3-1. HEYTEAの海外マーケティング戦略
現在、HEYTEAは、中国の香港とマカオに加え、シンガポール、イギリス、カナダ、オーストラリア、マレーシア、アメリカ、韓国、日本の8カ国で70店舗以上を展開している。シンガポールから海外展開を開始したが、果物のサプライチェーンの問題や、ヨーロッパと似たコーヒー飲用文化などから、日本市場への参入は比較的難しかったのだろう。そのため、ヨーロッパ進出が成功した後に、ついにこの度、大阪店をオープンすることで日本に進出する運びとなった。
HEYTEAは海外展開において、伝統的な中国茶文化と現代の消費者ニーズを融合させ、現代的な中国茶文化体験を提供すること、本物の高品質のお茶を提供しより幅広い層の人々に喜びを与えることを目指している。海外の店舗では、以下の要素が一般的に見られる。
- HEYTEAは、商品にパウダーではなく、本物の牛乳、本格的な茶葉、新鮮な果物、純粋なサトウキビ糖などの材料を使用している。品質は慎重に選択され、味は細心の注意を払って管理されており、消費者に新鮮で健康的でユニークな美味しさを提供している。大阪店では、北海道十勝牛乳を材料として使用していることをアピールしている。

Figure 8. 専用アプリ上で北海道十勝牛乳の使用を強調
- HEYTEA は、お茶の香りに包まれながら東洋と西洋の文化をシームレスに融合させ、「茶-禅」の体験をデザインに取り入れている。大阪店では、禅に関連する伝統的な日本庭園芸術「枯山水」を店舗デザインに巧みに取り入れている。

Figure 9. 大阪店店内の様子
出典:HEYTEAジャパンのインスタグラム公式アカウント
- HEYTEAの海外店舗のほとんどは、世界的に有名な象徴的な都市、主に各地の中核ビジネス地区にある。さらに、いくつかの店舗はチャイナタウンの中、近くに位置するため、初期段階では中国人駐在員や観光客をターゲットにすることができる。大阪の道頓堀には、周知の通りたくさんの中国人観光客がいるので、大阪店は彼らをターゲットにすることができる。(イギリスのHEYTEAストアと母国の消費者をターゲットにするアイデアについては、こちらの記事をご参照ください。:海外在住外国人コミュニティ:“ディアスポラ”は海外進出の際のゲートウェイになる)
- HEYTEA は、新店舗のオープンに合わせて、地域限定の冷蔵庫マグネットを導入しており、一部のファンに熱狂的な人気がある。これらのマグネットは、伝統的な地元の文化や地理的要素と象徴的なHEYTEAのロゴを融合したものであり、大阪店ではたこ焼きをモチーフにしたマグネットが用意された。

Figure 10.大阪店限定マグネット
3-2. HEYTEA大阪店に関する懸念と提案
3-2-1. アグレッシブな価格設定
HEYTEAの大阪店では、千目抹茶シリーズ、リアルフルーツティーシリーズ、ミルク&グリーンティーシリーズなど、定番の商品を幅広く取り揃えているが、執筆時点では商品の種類は中国よりも限られている。
多くの中国メディアでも取り上げられているように、最も大きな懸念材料の一つは非常に高価格な価格設定だ。HEYTEAのドリンク1杯が1,000~1,300円、ピュアティーでも550~750円であるのに対し、ゴンチャのピーチ阿里山ティーエードがMサイズで530円(※果肉はゼロか、それほど多くは入っていないように見える)、スターバックスのラテのトールサイズが500円程度と、他ブランドと比べるとかなり高価格な設定であることがわかる。特に大阪では1,000円もあればランチセットが十分に楽しめるので、これでは日本の消費者は、新しくできた新式茶に迂闊に手を出すことはできないだろう。

Figure 11. HEYTEAの高価な価格設定
しかし、私はHEYTEAが日本市場でハイエンドのポジションを取ることには賛成だ。
まず、日本でHEYTEAの品質を中国と同等に保ったまま価格を安くすることは難しいだろう。日本の国内果物自給率は40%未満であり、価格も中国より高い、日本産の果物を使うか輸入果物を使うかにかかわらず、日本でフルーツティーを作るコストは、コストは、中国で生産するコストの数倍になると言われている。
2010年に初の海外店舗の出店場所に日本を選んだシンガポールの高級ティーブランドTWGの日本人パートナーであるレイコ・ベタ氏は、約8年前にZUUオンラインに行われたインタビューで、日本のお客様は高品質の製品を求めており、喜んでお金を払が、多くのグルメブランドはメインストリーム市場にとどまり、品質を重視する消費者のニーズを無視しがちという趣旨のことを述べている。この洞察を踏まえても、HEYTEAが日本で高品質のお茶、新鮮な果物、牛乳を提供することで、日本のハイエンドからミドルエンドの市場ポジションを獲得することは理にかなっている。
さらに、日本市場では一部の果物は高価とみなされるので、そういった果物がカップの外側から見えることで、高い価格を正当化できることができよう。チーズティーも中国市場よりは高く設定することは合理的であろう。日本の消費者は、チーズと茶を混ぜ合わせた飲料を、最初は奇妙と感じる可能性があることを考慮すると、無名の海外ブランドが革新的な製品をより低価格で導入した場合、保守的な日本の消費者はそれを奇妙に感じ、避ける選択をする可能性が高い。アーリーアダプターを引き付けるためにも、高額なプレミアム価格設定になっていることは理解できる。
ただそれでも、4桁の価格設定は日本の消費者には高すぎると映ると考えられるので、HEYTEAは、品質を維持するのが難しいとはいえ、1,000円を下回る価格設定に値段を抑えるべきだろう。解決策の一つは、サイズを小さくして価格を下げることだ。日本のスターバックスで最も人気のあるサイズはトールサイズ(350ml)なので、HEYTEAの現在の500mlサイズは、日本の消費者、特に女性消費者には大きすぎるかもしれない。HEYTEAが小さめの商品を開発できれば、高級志向を保ちながら、価格を下げてローカライズすることができるだろう。
また、HEYTEAが得意とするコーブランディングが役立つだろう。Fendiのように高級ブランドとのブランディングは、ハイエンドのポジショニング戦略を助けるることができる。しかし、日本の消費者は中国の消費者ほど、ブランドロゴそのものには、あまり執着していないように見えるため、パッケージ以外にも、彼らとコラボするための方法も模索する必要があるが。(中国でのコーブランディングプロモーション事例に興味のある方は、こちらのNoteの記事もご参照ください。 バイラルマーケティング:上海でのLOEWE x Hello Bikeのプロモーションが大バズり)

Figure 12. HEYTEA x Fendi コラボ
3-2-2. 抹茶プロダクトにフォーカスするのは良くない
執筆時点でHEYTEA大阪店のミニプログラムアプリや店頭メニューを見ると、抹茶商品が上位に置かれており、この店舗では、抹茶関連商品を優先的に販売しているように映る。抹茶は日本を代表する商品なので、中国人観光客をメインターゲットにしているのであれば、これはうまくいくだろう。

Figure 13. HEYTEA大阪店のメニュー表
ただ、抹茶商品のプッシュは、地元の顧客をターゲットにするなら優先すべきではないだろう。まず、抹茶は京都を代表する味であり、大阪の味とは少々ミスマッチがあると思う。私は消費者として、大阪の濃厚なソース風味の食べ物を食べた後で抹茶味を選ぶことはないだろう。また、自身の京都での10年間の小売経験に基づくと、地元の消費者は意外にも抹茶をそれほど好んでいないと言えよう。とりわけ大阪で買い物をすることが多い京都人にとっては、抹茶味に惹かれる可能性は低くなるだろう。基本的に、抹茶味の商品は国内外の観光客向けと言える。
日本の現地消費者が、日本で中国ブランドの店に入るときに、日本の代表商品である抹茶を選ぶ可能性は高くない。 もちろん、抹茶フレーバーの商品は、現地の消費者の間でも人気が出る可能性はある。しかし、HEYTEAが最初にブランドを発表するときには、インスタ映えするフルーツティーやミルクティーを若い女性消費者にプッシュする必要があるだろう。味の面では、フレッシュフルーツティー、フルーツビネガー、フレッシュミルクティーの低糖バージョンに重点を置くことも考慮することができよう。日本イコール抹茶という考え方は少し単純すぎるだろうし、日本の観光地では抹茶製品が至る所にあることを考えると、他と差別化するためにも、他の種類の商品を宣伝する必要がある。
さらに、日本人はコンビニで頻繁にお茶を買うので、HEYTEAはRTD製品を販売し、日本の消費者の間で認知度を高めることもできる。同社のRTD製品であるライトフルーツティー (轻果茶) とストロングフルーツティー (浓果茶) は、日本市場で可能性を秘めている。

Figure 14. HEYTEAのライトフルーツティー (轻果茶)
3-2-3. 行列の管理: 日本の消費者が HEYTEA Go のコンセプトを受け入れるには、かなりの時間が必要。
HEYTEAはパウダーではなく茶葉からお茶を作るので、商品特性上、注文から提供まで時間がかかる。その為、中国でも一時期はブームと相まって、店舗が提供待ちの顧客でごった返すことも見られていた。ただ、事前にアプリで注文・支払いができ、商品を店舗で並ぶことなく受け取ることができるシステム、HEYTEA Goの仕組みが開発されると列は見られなくなった。
日中飲食産業交流促進会の記事によると、注文や受け取りの過程で混乱や順番を飛ばすといった経験をした顧客がおり、全体的な体験が著しく損なわれたと報告している顧客がいるという。その背後には2つの根本的な問題がある。
第一に、日本人としては周知のことであるが、日本人消費者は、基本的人気商品を購入する際は店の前に整然と並ぶ。ただ、長時間整然と並ぶことはストレスになるため、列に割り込むと飛ばされた人は気分を害し激怒することさえあり、顧客の不満やフラストレーションにつながる。顧客満足において列の管理はかなり重要な役割を占めるのだ。
第二に、前述のように、日本の顧客は、アプリで事前注文や事前支払いを済ませて、列に並ばずに商品を受け取るという便利な方法に慣れていない。その結果、他の顧客が予約注文した商品を受け取ると、順番を抜かされたと感じてしまう。例えば、私が上海から帰国した際にHEYTEAに行くならアプリを使用し事前注文・支払いをするだろう、そして店舗に着いたと同時に、多少気は引けるのだが商品待ちの顧客を飛ばして商品を受け取ることになる。これが、特に列を抜かされたと誤解する顧客にとっては、ネガティブな顧客体験や印象につながる。(Grab-and-goに関する洞察については、以前の記事を参照ください。中国カフェチェーンの海外進出“Grab-and-Go”でシェア拡大を狙え )だから、店舗スタッフは、行列を慎重に管理し、HEYTEA Goアプリを宣伝しながら、事前注文システムの使用方法を顧客に説明する必要がある。

Figure 15. HEYTEA大阪ストアの行列
3. 最後に
HEYTEAが大阪に新店舗をオープンするというニュースは、中国のネットユーザーやビジネスマンの間で大きな議論を巻き起こしている。マーケティング戦略には賛否両論あり、悲観的な意見や、HEYTEAがすでに日本から撤退した奈雪の茶と同じ道をたどるのではないかと予測する意見もある。しかし、私は楽観的に見ており、日本での成功を期待している。HEYTEAの強みはチーズティーやフルーツティー、コラボブランドとのプロモーションだけでなく、革新的な商品開発にある。そのうちに、日本市場でローカライズされた人気商品を開発し日本の消費者を刺激するだろうと期待・注目している。また、ヨーロッパやカリフォルニアなどの米国市場で人気を得ることは、日本でのマーケティング活動に役立つ可能性が高い。カリフォルニアで大流行などといった言葉に弱いのが日本人消費者でああり、事実、私はそういった言葉に非常に弱い。今後もHEYTEAの日本でのマーケティング活動に注視していきたい。
出典・参考文献:
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[2] 第一财经. 揭书宜.2025.02.10. 开放加盟两年多后即暂停,喜茶称“数字游戏已经走到尽头”
[3] 霞光社ShineGlobal. “平价之光”蜜雪冰城,盯上了日本年轻人.
[4] ニッセイ基礎研究所. 廣瀬 涼.2020.11.16. 第3次タピオカブームを振り返る.
[5] 36Kr Japan. 2023.03.18. 中国発激安ティードリンク「MIXUE」、日本に上陸。タピオカブーム終焉の日本で果たして成功できるか
[6] 证券时报. 2025.02.19. 奶茶店“出海”!头部新茶饮大动作频频
[7] Product Iden GmbH. 2025.03.01.行业观察 | 喜茶出海及其品牌策略.
[8] 品牌声呐. 2025.03.06. 喜茶在大阪当“奶茶刺客” | 大声
[9] Rentio Press. hirata.h.2024.12.13.スタバのサイズと値段は?読み方や頼み方も紹介!ベンティはお得なのかも解説
[10] 日中餐饮产业交流促进. 2025.02.21.喜茶日本首店开业盛况空前,顾客体验后两极分化.
[11] ZUU.online.2016.01.24. 高級ティーブランド「TWG Tea」が日本で人気の理由.
[12] Campaign Asia. 2023.06.18. When luxury brands meet new consumer brands: A likely pick or gimmick for China’s Gen Z?
[13] FoodTalks.2023.04.16. 喜茶推出“轻果茶”新品:葡萄黑加仑乌龙茶、柚柚铁观音乌龙茶.
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