

By 钱 俞颖,鶴田 彬, 2026.03.09 先日、京都で飲食店事業開業におけるコンサルティングサービスを提供されている高さんに、中国語Podcastにおいて、インタビューをさせていただきました。その中で、日本人視聴者の方にも伝わると面白いと思うポイントをお伝えさせていただきます。こちらは、インタビュー後編になります。後編は、京都という土地でどのようにブランディングしていくかをメインにお話しいただいています。最近日本人に話題のChagee含む、中国の国潮ブランドに興味をお持ちの方にもおすすめの内容となっておりますのでご参照いただければと思います。(前編はこちら:中国の飲食店ブランドが日本市場で成功を収めるためには -日本市場進出・開店支援コンサルタントにインタビュー- (Part 1)) 高氏プロフィール 京都府京都市にて、飲茶レストランをチェーン展開。加えて、自身の事業で培った経験とノウハウをもとに、日本市場進出を目指す中国飲食店ブランド業の開店支援をコンサルタントして創業。昨年は、中国新進気鋭のカフェブランド M Standの海外進出をサポート。 インタビュー本編 6. 京都という市場について インタビュワー:「高さんは、京都を拠点に、京都を中心に活動されているとのことですが、初出店の地として京都を選ばれた理由をお聞かせください。また、日本での出店地選びでは、多くの海外ブランドが、東京か大阪に初出店する傾向にあると思いますが、それらの都市と比べて京都にはどのような強みがあるのでしょうか?」 高氏:「京都を選んだ理由はシンプルです。古い街並みの雰囲気が好きだったからです。そして、縁あって語学学校を卒業後、大学も京都で学び、10年間も京都に住み続けることになりました。個人的な視点から言うと、まず、雰囲気が良いというですね、個人的に京都が好きなんです。」 高氏:「そして客観的理由として、京都の人たちの購買力が比較的高いということが挙げられます。海外出店という観点から言うと、東京は首都であり、大阪は大都市なので、相対的に購買力はかなり強いことは否定できませんね。では、なぜ京都を選んだのか?理由はいくつかあります。」 高氏:「まず、京都が観光都市だからです。観光都市の特徴は、世界中から多くの人が訪れることですよね。そして観光客の消費行動は比較的限定的になります。彼らの関心は主に、レジャーや食事、コーヒー、お土産になります。しかも、旅行中なので、価格はあまり気にしません。私の場合、旅行中は「お金を使うものだ」という意識で過ごしています、体験と消費のためにそこにいるのですから。このように、ターゲットの一つとなる旅行客は、お金の使用に寛容な傾向があると言えます。」 高氏:「次に、京都は、オーバツーリズムの課題も抱えるくらいの人気の優れた観光都市です。昼間の歩行者数が、京都のインフラのキャパシティをはるかに上回っていると言えます。私たち店主にとっては、店の前を通る通行客が多ければ多いほど良いですよね。特に観光地によっては、東京や大阪に匹敵するほどの歩行者密度になることもあります。これらの場所で店を開いている人にとっては、非常に高い人密度を享受できるのです。一方で、家賃はそれほど高くなく、価格に敏感でない旅行客は購買意欲が比較的高いため、高いコンバージョン率(入店率・購買率)を実現することができます。」 Figure 8. 観光客のトラフィックを享受できる京都東山の%Arabicaストア 出典: %Arabica公式HP 高氏:「加えて、京都では世界中の消費者と接点を持つことができます。世界一の観光都市の一つですから、欧米、アジア、中東、さらには北欧など、あらゆる地域のお客様に出会えます。ここで培った経験と収集したデータがあれば、世界の主要な国や地域の消費者の嗜好や購買力などを把握することができます。また、ブランドの露出効果は非常に高くなり、ブランドの親和性が上がり、彼らの母国などの生活圏に進出するときにアドバンテージになるでしょう。」 高氏:「そして、最後に、『京都』という地名自体に価値があるということが挙げられます。京都発のブランドというだけで、世界中の人々の心をくすぐりますよね?また、古都としての京都は、美意識を非常に重視する都市というイメージがあります。とりわけ、カフェやジュエリーブランドなど、外観・美を重視するブランドにとって、京都で事業を成功させることはブランドの価値向上につながります。あるビジネスライターの方に、私のプロジェクトを評価していただいたとき、『京都に出店することは、欧米をはじめとする先進国の市場における自社ブランドの美の保障を手に入れるようなものだ』とおっしゃったのを覚えています。京都で高く評価されれば、世界中どこへ行っても、イメージだけでなく、しっかりした中身のあるブランドだと思われるはずです。京都という街自体に、とても強いスタイルがあるんです。ですから、ブランドは、より芸術的で、ニッチで、かつ強い人間感覚を持つブランドである必要があると思います。そういったブランドが京都に来たら浮くことはなくうまく溶け込むことができると思います。ですから、スタイルを重視するブランドにとって、京都に出店することは非常に大きなアドバンテージ・ボーナスポイントがあると言えます。」 インタビュワー:「外国人観光客は京都を訪れる際に、京都のローカルな文化や産業を体験することに興味を持っていると思いますので、中国市場で持つブランドアイデンティティを維持することと、ローカライズしながらグローバルブランドとしての地位を確立することの、両方のバランスを取る必要が出てきますか?」 高氏:「それは各ブランド次第と言えますね。中国国内市場で比較的新しいブランドであれば、大きな抵抗には遭わないでしょう。せっかく旅行するんだし、京都の古都の雰囲気が好きで来る人も多いですよね。でも、旅行してしばらくすると美的感覚も鈍ってきます。私たちが海外旅行を長く続けると、そのうち中華料理を食べるようになるし、西洋人もしばらく海外に住めば、そのうち洋食を食べるようになるのと同じです。現代的なブランドだから京都で生き残れないというわけではありません。京都には毎日十分な人が訪れているので、今日は疲れていて、もうお寺を見て回るのは飽きたし、もっとモダンな場所に行きたいと思う人も多くいます。」 高氏:「とはいえ、古都の持つ魅力に影響を受けるブランドもあります。例えば、現在中国で人気のある伝統的な中国風の要素を強調した「国潮」ブランドは、京都では苦戦するでしょう。主要なターゲットの一つである観光客は京都の文化を体験するために来ているので、そのほかの異文化を体験しに訪問しているわけではないからです。これらのブランドが京都での展開を目指すなら、まずは、中国文化の核となる部分は保持しつつ、表面的な中国的要素を抑える必要があるでしょう。例えば、パッケージの色使いや文字使いなどを、表面的な要素を修正する必要があるでしょう。海外で成功するには、ときには表面的な要素を捨て去り、本質を見極める必要もあります。」 Figure 9. 国潮ブランドリスト・紹介 出典: Triunity まとめ・各社公式HPなど インタビュワー:「例えば、国潮ブランドに限らず、インド文化の影響が強い製品を見ると、インド人にはそれがインドの伝統的な美しさの一部と見なすことができ魅力につながるかもしれませんが、外国人にとっては少し理解しにくい場合もありますもんね。」 高氏:「ニューデリーが旅行の目的地なら、観光客もそう言ったブランドを購入するでしょうが、例えばパリでそれを販売しても、『なぜここでインド製品を買わなければならないの?』って思ってしまいますからね。逆に明確にインドらしさを謳わなければ、そう言った障壁は避けれますよね。例えば、地元の文化と取り入れる取り組みとして、パリのデザイナーを雇用して、ブランドのデザイン、コピー、カラーを再解釈・リデザインすることが出来れば、文化融合の魅力も伝わり消費者の心を掴むことができるかもしれません。」 インタビュワー:「そうですね、つまり、中国的な要素を減らして日本的な要素と融合させることで、中国風のブランドが日本人に受け入れられやすくなるということですね。」 高氏:「はい、先ほどお話したように、京都は美意識を非常に重視する街です。視覚表現一つとっても、京都ならではの独自の基準があります。ですから、京都に進出できるブランドには、ある程度の洗練度が必要だと私は考えています。あまりに中国文化を主張すぎるブランドは、京都での展開には適していません。街の雰囲気に合わないでしょう。」 インタビュワー:「街そのものについてですが、京都からはどのような印象を受けますか?」…
By 钱 俞颖,鶴田 彬, 2026.03.03 先日、京都で飲食店事業開業におけるコンサルティングサービスを提供されている高さんに、中国語Podcastにおいて、インタビューをさせていただきました。その中で、日本人視聴者の方にも伝わると面白いと思うポイントをお伝えさせていただきます。 高氏プロフィール 京都府京都市にて、飲茶レストランをチェーン展開。加えて、自身の事業で培った経験とノウハウをもとに、日本市場進出を目指す中国飲食店ブランド業の開店支援をコンサルタントして創業。昨年は、中国新進気鋭のカフェブランド M Standの海外進出をサポート。 インタビュー本編 1. 中国人視点で見る飲食産業における日本市場と中国市場の違いとは? 弊社でも中国企業の訪問客の方が多く相談に来られるのですが、日本市場と中国市場の違いを理解せずにそのまま新市場に飛び込んで行こうとしているお客様によく出逢います。事前調査はAIで済ませた、もう市場は理解していると分かった気になっておられる方も一部いらっしゃいます。各国各地域間のギャップを深く理解しないで、自身の事業・ブランドなどをリデザインしないで、出たとこ勝負をするのはもちろん得策では無いのは日本のビジネスマンの方ならよく理解されていることでしょう。しかし、言うは易しです、他国の市場を理解するのは容易ではないでしょう。文化や規制など多くの常識や暗黙の了解といったものがそこには存在します。一方で、地元ビジネスパーソンや地方政府が、海外企業が日本市場進出の何に障害を感じているのかを、海外ビジネスパーソン視点で、深く理解出来ていないことも現状としてあります。 今回は、中国企業の日本進出をコンサルタントとしてサポートされている高氏にインタビューすることで、『中国企業が日本市場にオフライン店舗をオープンする際にどのような点に気を配るべきか』についてインタビューさせていただきました。中国ブランドを日本市場に持ち込みたいビジネスパーソンの方や、逆に日本ブランドを中国市場に持ち込む上でどのような視点が必要かといった点で参考になるかと思います。ではインタビューをお楽しみください。 インタビュワー:「長年日本に住み、日本市場と中国市場の両方の市場に触れてきた中国人として、日本と中国の市場には大きな違いがあると思いますか?日本市場の最大の特徴は何だと思いますか?」 高氏:「日本市場の最大の特徴は中国市場と比較すると保守的で、かつ成熟した市場であるということだと考えます。中国人の中では、『日本人は心配性である』と冗談を言うことがありますが、それは日本人の持つモノ・サービスに対する期待値が非常に高く、期待するイメージもすでにある程度固まっているからです。彼ら消費者の持つ期待に応えることが出来なければ不満を持つことになります。」 高氏:「加えて、日本の消費者は既に経済の急成長期を経験している世代も多く、中国人の私たちが今楽しんでいるものの多くは既に体験しています。ですので、中国人のビジネス視点で『これは新しい』と認識しているものが、日本人にとって必ずしも新鮮に映らない可能性があります。そのような背景があることもあり、中国人から見ると、日本人は概ね新しいこと・ものを体験することにそれほど熱心ではない傾向があるように見えるでしょう。一方で日本人消費者は、自ら選択しそのモノを使用した、またはサービスの最初の1回目の体験が良ければ、追体験を期待して繰り返し購入する傾向が強いです。」 高氏:「中国ブランドが成功するためには中国市場でのビジネスと日本市場でのビジネスを連携させていくことが一つのカギになってくると思います。日本市場ではブランド側の試行錯誤は受け入れられにくいです。初回の商品・サービス提供時に悪印象を与えれば、そのお客様は2度と戻ってくることがないでしょう。一方で、中国市場ではそんなことはなく、ビジネスにおいては最低限のクローズドループを準備してスタートしひとまずスムーズに運営することを目指し、その後、調整・修正していくというスタイルが一般的です。例えば、飲食業界を例にあ上げると中国市場では、ブランドはメニューや味付けをその都度調整・改良して、継続的に改善していくことが比較的容易ですが、日本市場ではそんなに簡単にそのような変更はできないでしょう。日本の消費者を一度また二度満足させることができなければ、3度目の改善機会を持つことはできないと考えていいと思います。」 Figure 1:中国市場と日本市場の特徴比較 インタビュワー:「この試行錯誤を許さない理由として、日本市場には消費者にとって選択肢が非常に多くあることが挙げられるのでしょうか?それとも何か他の理由があるのでしょうか?」 高氏:「そうですね、相対的に言えば、日本市場のサービスは中国市場と比べかなり成熟しています。ビジネスを行うと言うことは、結局のところ顧客・消費者のニーズを、問題を解決することに尽きますが、日本人の消費者は、既に10点満点中8点か9点、あるいはほぼ完璧な解決策を持っているのです。私は、より良い解決策があるのではないかと常に模索していますが、もし無いのであれば「どのように」モノ・サービスを提供するかが重要になります。この点が中国市場とは、大きく異なるかと思います。文化的な背景による部分もあるかもしれませんが、その違いが主な理由だと思います。日本消費者と中国消費者の商品・サービス体験全体に対するニーズは、実に大きく異なるということです。」 2. 中国ブランドをどのように日本市場にローカライズすべきか? 母国市場から新規市場へモノ・サービスを持ち込む際には、ローカライゼーションが必要という点は一般的に言われますが、このセクションでは、中国市場の商品を日本市場に持ち込む際にどのようなローカリゼーションが必要と現場の最前線のビジネスパーソンが考えているのかを伺ってみました。 前半部分はビジネス習慣のギャップなどがあり、逆に中国企業をクライアントにもつ日本のビジネスマンが、彼らがなぜ日本の商習慣の常識から外れた行動を取るのか、どこが日本市場特有で海外企業がギャップを感じるのかを理解することができ、認識のギャップを避けトラブルを避けることに役立つポイントがあると思います。 インタビュワー:「高さんは、日本における中国ブランドへのローカライゼーションコンサルティングサービスの提供されていますが、特にビジネスを海外展開する初期段階において、中国人クライアントの方が遭遇する日本市場における中国市場との文化やビジネス慣習における相違点はどのようなものがありますか?何かご意見をお聞かせいただけますか?」 2-1. 変化に対する考え、コスト感の違い 高氏:「これはクライアントが抱える顕著な問題です。全中国企業がこの問題に直面すると思います。最頻出する問題は、ビジネスにおける変化のペース・スピードに対する姿勢における違いです。日本社会の変化のペースは、中国社会と比べると遅く、特に新しい変化に関しては見つけるのが簡単ではない市場といえます。中国社会が持つ状況に応じて変更を都度加えていくアプローチと比較すると、日本社会はプロジェクトの発起当初から最終的なプロジェクトの実装段階を詳細に計画しているといえ、それが一般化しています。そしてその計画したタイムラインに沿って段階的に計画を進めていくことになります。」 高氏:「例えば、よくあるケースとして、新店舗をオープンする上で、建物の改装が必要になることがあると思います。そのプロセスにおいて、中国では途中で頻繁に計画変更を行い、問題が発生した際には、すぐに対応できる担当者を派遣して対応することになります。この様なやり方は、日本では中々に難しいと留意しておく必要があります。新店舗の企画・設計段階で一度確定させてしまうと後々に内容を変更することは非常に困難になります。」 高氏:「これには多くの要因が関係しています。まず、仕事の慣習の違いが挙げられるでしょう。また、日本では委託業者が複数の異なる現場を、掛け持ちし同時にプロジェクトをこなしていることが挙げられます。彼らがクライアントと1週間作業を共に過ごしていたとして、次週には別の持ち場に移ってしまうので、クライアントが変更を加えたいと思い呼び戻そうとしても、彼のスケジュールは埋まっており、2-3ヶ月待たなければならない可能性があることは知っておくべきでしょう。日本でビジネスを展開し、何かしらの変更を加えたい場合、中国市場で行うよりもコストも時間を多大に掛かるのです。この認識のズレが中国企業が最も直面する一般的な問題の一つと言えます。」 2-2. 賃貸借契約における慣習の違い 2-2-1. 高い開店コスト 高氏:「二つ目の大きな違いは、不動産の賃貸借と認可に関するものです。一般的に、日本で店舗を開設する場合の賃貸借期間は、中国と比べ、比較的長めになります。3年から5年が最も一般的なリース期間になりますが、日本のショッピングモールなどの商業用不動産においてはリース期間は一般的に5年から7年にもなり、特に飲食店では7年から10年が一般的になります。ショッピングモール側が、より長いリース期間を提供することで、投資回収と返済を保証しようという背景があります。そして、店舗を開店するにあたっては、敷金、入居費、仲介手数料、リフォーム費用など多く存在し、これが初期費用を膨らませ、参入障壁をのし上げています。これらの費用だけで家賃の12−18ヶ月分(商業施設の場合)に相当し、そこを中国企業は考慮する必要があります。例えば、月額家賃が10万元(約200万円)の場合、初期費用だけで200万元(約4,000万円)近く支払うことになり、財務に大きな負担がかかることは留意すべきです。」 2-2-2. 高い信用コスト…
By 鶴田 彬、2025年9月5日 1. Intro 先月、私の地元である京都に帰省していて街中をウロウロと歩き回っていると、街が以前帰省した2023年よりもはるかに国際的で外国人に優しい街になっているように感じられた。特に祇園周辺では、多くのレストランが外国人観光客向けに特化しているのは明らかで、昔よく通っていたお店などは無くなっていたり、景観が変わったからか道に迷うこともあった。また、ラーメン店の中には、日本人の好みに合わなそうというか、明らかに外国人観光客向けのお店もあるように見える。京都を訪れる外国人観光客は着実に増加していおり、2024年には京都市を訪れた外国人観光客が初めて1,000万人を超え、過去最高の1,088万人に達した。そして、外国人宿泊客の数は、日本人宿泊客を上回っている。そう考えると、外国人観光客をターゲットにすることは、賢明で理解しやすいビジネス戦略と言える。 Figure 1.2024年において京都の観光客が急増:外国人宿泊客数が日本人宿泊客数を上回る。 京都において、外国人観光客をメインターゲットに置くことは、何も地元ブランドだけに限ったことではない。最近、流行の中国コーヒーチェーン “M Stand(Mスタンド)” が、人気の観光地である南禅寺近くに海外初店舗をオープンした。なぜ、京都が海外第一号店の場所に!?と思う方も多いかもしれないが、これにはM Standの戦略的意図が反映されている。この印象的なデザインの店舗を訪れると、店内の客層は主に中国人観光客をはじめとする外国人観光客で、地元の日本人客は多くない。これは隣接するBlue Bottle Coffee (ブルーボトルコーヒー)の店舗とは大きく異なり、独自のマーケティング戦略によるものと思われる。 M Standのアプローチは、もちろん中国人旅行者をターゲットとしたディアスポラ・マーケティングの要素を取り入れているように見えるが、彼らのビジョンはより大きいように見える。これは、京都を起点に多様なグローバル顧客層を獲得することを目的とした、より先見性のある戦略を示唆している。この記事では、M Standの京都進出を紹介しながら、京都でグローバルなブランディングをすることの意味・インパクトを述べていこうと思う。(ディアスポラ・マーケティングに興味のある方はこちらの記事もご覧ください。:海外在住外国人コミュニティ:“ディアスポラ”は海外進出の際のゲートウェイになる) Figure 2. M Standの海外第1号店が京都にオープン 2.グローバルにブランディングしていく上での京都の魅力・利点 日本の古都である京都は、日本人の方なら言うまでもなくご存じだと思うが、外国人の方々にも豊かな歴史と美しい景観で知られている。春は桜、夏は緑豊かな自然、秋は鮮やかな紅葉、冬は静謐な雪景色と、象徴的な歴史的建造物に囲まれながら、一年を通して訪れる人々を魅了している。かつ、舞妓や禅といった独特の文化的要素も、この洗練された街の特徴であり、これらのポジティブなイメージが京都を拠点とするブランドと結びつき、ブランドイメージを向上させる機会を提供することになる。外国人の消費者に京都発のブランドですと紹介して、あー低品質のサービスの悪いブランドかもねという印象を抱かれることはないのは感覚的にわかるだろう。 FIgure 3. 京都の四季折々の景観 出典: “京都観光Navi” and “絶景に行こう!!” 京都は世界中から観光客を惹きつけるので、京都のブランドは多様な消費者にリーチし、グローバルなブランド認知度を高めることが出来る。京都市産業観光局によると、最も多い観光客は中国人で、次いでアメリカ、韓国、オーストラリア、イタリア、フランスからの観光客が続いている。京都は中国ブランドにとって、出店する上で魅力的な場所と言えよう。自社ブランドに馴染みのある中国人観光客をターゲットにすることで、最小限のマーケティング努力で即座に収益を上げることができ、同時に、他の海外からの観光客や日本の消費者にも自社ブランドを宣伝し、将来のグローバル市場への進出の基盤を築くことが可能だからだ。 Figure 4.2024年の京都市における外国人宿泊者数の出身地域別割合 グローバルに店舗を展開しているカフェチェーンである% Arabicaは、ローカルのベンチャーから国際ブランドへと変貌を遂げた、マーケティングの成功例と言えるだろう。香港で日本人起業家、東海林克範氏(Kenneth Shoji)によって設立されたこのブランドは、京都の東山に旗艦店をオープンしたことで大きな注目を集めた。この戦略的な動きが% Arabicaの幅広い認知度獲得へとつながり世界各国への進出をもたらし急速な成長を後押しした。 Figure 5. 京都東山の%Arabicaストア…
By 钱 俞颖, 2025.06.20 中国の中小企業からシンガポール市場への参入に関する問い合わせがますます増えていることを受け、シンガポールの関連規制に関する実践的なヒントと、中国企業を例に扱いながら、それらに関する知見を共有することにしました。これらのヒントは、中国企業だけでなく、シンガポール市場に新規参入する、、大手多国籍企業を含む、他の外国企業にも役立つと考えますので日本語版でもシェアさせていただきます。以下、記事をご覧ください。 シンガポールにおける中国の食品・飲料チェーン店の参入状況 周知の通り、シンガポールは、地理的な近さ、文化的な類似性、そしてビジネス優遇政策を背景に、中国企業によるASEAN進出の拠点として好まれている。2024年6月末時点で、35の中国食品・飲料ブランドがシンガポールで191店舗を展開している。特に2023年以降には、COTTI Coffee、Luckin Coffeeなど、15の新規ブランドがシンガポールに進出している。(Luckin CoffeeとCOTTI Coffeeの海外展開については、こちらの記事もご覧ください:中国カフェチェーンの海外進出“Grab-and-Go”でシェア拡大を狙え) シンガポールにおける中華系飲食店のタイプは多様であるものの、カジュアルなダイニングや飲料への偏りがある。Luckin CoffeeやMIXUEといった飲料店(コーヒー・紅茶専門店)が全体の48%を占め、最も大きな割合を占めている。次に多いのは、主に火鍋などのメイン料理で、四川料理や中国北部の料理を提供する店が多く、シンガポールの中華系飲食店の27%を占めている。(東南アジアにおける新しいスタイルのティーブランドのサプライチェーンについては、こちらの記事をご覧ください。: 新式茶のグローバル展開: サプライチェーンの最適化が成功の鍵 (MIXUE, HEYTEA, CHAGEE, ChaPanda)) Figure 1:シンガポールにおける中国の食品・飲料ブランドの内訳 中華料理への需要が持続し、市場環境も好調なことから、中華系食品・飲料チェーンはシンガポールで引き続き成長していくと見込まれている。その大きな原動力の一つは、シンガポールに多数居住する華僑の存在になる。2024年6月現在、シンガポール国民の75.6%は華僑である。また、シンガポールは中国人観光客に人気の旅行先となっており、2024年には中国本土から308万人が訪れ、前年比126%増を記録し、昨年のシンガポールへのインバウンド観光客総数の18.7%を占めると推定されている。中国人観光客からの大きな需要と、華僑シンガポール人の間で高い受容度を誇ることから、中華系食品・飲料チェーン店がシンガポールに進出するのは、比較的容易であると結論づけられる。 Figure 2: シンガポールに進出したLuckin Coffeeのとある店舗 しかしながら、シンガポールで食品・飲料チェーン店を開業するには、いくつかのリスクが伴う。その一つが各種の規制遵守になる。 コンプライアンスのための主要な規制 シンガポールでは、食品・飲料事業は規制や法律によって非常に厳しく規制されており、食品安全、衛生基準、労働法など、様々な側面が規制されている。 シンガポールでレストランやコーヒーショップを開業する際に、企業が注意すべきコンプライアンスは基本的に3タイプに分類できる。それは以下の通りである。 a. 市場参入におけるコンプライアンス シンガポールで外国人がレストランや喫茶店・カフェを開業することに関して、特別な制限はない。外国人は、会計企業規制庁(ACRA)に直接会社を登録し、レストラン経営に必要なライセンスを取得することができる。 一般的に、シンガポールで食品店のライセンスを申請することはそれほど難しくなく、各部門が提供する手順に従って、GoBusiness Portalで申請するだけである。 Figure 3: 食品店に適用される一般的なライセンス 現地居住要件 / Local…
By 钱 俞颖, 2025.05.13 2025年初頭、中国の新式茶(ニュースタイルティー、新感覚ティー)ブランド3社、Good Me(古茗)、MIXUE(蜜雪冰城)、CHAGEE(霸王茶姬)が香港と米国で上場した。新式茶業界における上場数の急増は、中国の新式茶市場における熾烈な競争を示唆している。中国チェーンストア&フランチャイズ協会(中国连锁经营协会)が発表した報告書によると、中国の新式茶市場は2025年に2,010億人民元に達すると予想されている一方で、市場の成長率は2023年の44%から2024年には19.7%に低下している。 Figure 1. 中国における新式茶の市場規模と成長速度 「競争が激しすぎて、ある意味ではIPOが最後のチャンスかもしれない」と、オンライン小売メディアLingshouke(灵兽传媒)の食品・飲料アナリスト、Shi Li氏は述べている。(競争激しい中国の新式茶市場についてはこちらの記事もご参照ください: MIXUE (蜜雪), HEYTEA (喜茶), Chagee (霸王茶姫), etc. 中国の新式茶とは?-新式茶市場における新たなトレンドを分析-) 中国市場がレッドオーシャンへと移行する中、大手ブランドも戦略を転換し、海外市場への注力を強化している。様々な新式茶ブランドが、様々な地域でポジションを築き始めている。 MIXUEやCHAGEEなど多くのブランドが、地理的な近さ、暑い気候による飲料需要、そして中国ブランドの受容度の高さなどを理由に、最初の進出地として東南アジアを選択している。MIXUEは2024年末までに東南アジア地域で約4,800店舗を展開し、中国で展開する低価格モデルを模倣・実施することでインドネシアとベトナムで大きな成功を収めている。そして、CHAGEEは、スターバックスをベンチマークとして、マレーシアとシンガポールで高級ミルクティーブランドとしての地位を確立しつつある。 一方で、ChaPandaは、コーヒー文化が支配的な韓国市場に挑戦しており、HEYTEA は北米や英国などの高級市場に重点を置いている。(HEYTEAの海外市場展開については、以下の2つの記事もご参照ください。: 海外在住外国人コミュニティ:“ディアスポラ”は海外進出の際のゲートウェイになる ; 新式茶会の先駆者HEYTEAは日本の消費者をインスパイアできるのか?-日本初、HEYETA大阪店を紐解く-) Figure 2. 2024年までの主要ブランドの海外店舗数 最終的に誰が勝者になるかは未だ分からないが、新式茶ブランドが世界展開の初期段階で直面する最大の課題の一つは、サプライチェーンに関すものになるだろう。主要原材料を中国からの供給に頼ると、コストが大幅に上昇してしまうという課題がそこにはある。 Figure 3. 中国における新式茶サプライチェーンの概要 原材料の中で、特に重要なものはフルーツである。これが、新式茶と従来の茶系ドリンクの大きな違いの一つになる。原材料費は通常、フルーツティーの総コストの最大40%を占める。その中で、フルーツのコストは、全体の原材料費の約45%を占めており、茶葉、牛乳、トッピングなどの他の原材料と比較して最もコストのかかる材料となっている。 Figure 4. 新式茶の定番商品グレープチーズティー(多肉葡萄)の原材料コストの内訳 したがって、コスト削減には強力なフルーツサプライチェーンの確立が不可欠になる。中国国内では、大手ブランドは主に南部の省に農園を設立している。例えば、MIXUEは四川省と重慶市にレモン農園を構えることで、レモンの調達コストを1kgあたり4元から1元にまで削減した。(*MIXUEの中国国内での人気主力商品の一つはレモネードである。) Figure 5.…
By 鶴田 彬 & 钱 俞颖, 2025.04.15 Intro 前回の記事「新式茶会の先駆者HEYTEAは日本の消費者をインスパイアできるのか?-日本初、HEYETA大阪店を紐解く-」では、HEYTEAの日本市場への海外進出に関する分析について書きました。この記事を読んでいただきフィードバックを提供してくださった多くの読者の方々に心より感謝申し上げます。そして、ほとんどの日本人の読者の方にとっては、「新式茶」というワードに馴染みがないこと、そのような商品カテゴリーが中国市場でどのような存在感を放っているのか、基本的な情報が行き届いていないことを実感しました。新式茶(ニュー・スタイル・ティー)は、中国のフードチェーンブランドがいかにクリエイティブかを表した象徴的なものであり、世界の食品市場という視点から見てもイノベーションと捉えることができます。本記事では、中国の新式茶市場の概要を述べ、現在のトレンドを分析し、国際的に成功する可能性のあるブランドを考えながら解説できればと思います。 1. 新式茶とは(定義) 伝統的な茶飲料と比べて、新式茶は主に18歳から35歳の女性を含む若年層、特にZ世代に向けて提供されていると言え、私のような中年男性がこれらの商品に初めて出会うと、創造的すぎる、斬新すぎると感じてしまうかもしれない。実際に、私は初めてチーズティーを見た時は面を食らった。ひとえに新式茶と言っても様々な種類があるので、まずは新式茶のの定義を見てみよう。中国連鎖経営協会(中国连锁经营协会)のグループ基準「新茶飲術語和分類」によると、「新式茶飲料は、原葉茶や茶の抽出物と、果物、搾りたての果物や野菜ジュース、果汁100%ジュース、野菜、乳製品といった材料を組み合わせて作られる飲料である。これらの飲料には他の食品添加物を含むことがあるものの、固形飲料ミックス(パウダーなど)は含まれておらず、現場で準備・加工される。」と定義されている。 Figure 1. 組み合わせ次第で無限に広がる新式茶の種類 出典: 中国新茶饮供应链白皮书 2024 もう一度言い直すと、新式茶は、従来の茶葉または抽出液をフルーツ、ジュース、野菜、乳製品と組み合わせた飲み物で、固形ミックス・パウダーを使用せずに店舗・その場で準備された飲み物ということである。これらの原材料と加工方法に基づいて、新式茶の飲料は、フルーツティー、フレッシュミルクティー、バブルティー、コールドブリューティー、ミルクティーの5つのタイプに分類できる。とはいえ、消費者の頭の中では、大まかに言って、フルーツティーかミルクティー(タピオカティーを含む)の2つの選択肢に分別され、夏にはフルーツティーが好まれ、冬にはミルクティーが好まれる。消費者は、甘さのレベルを調整したり、タピオカパールなどさまざまな具材を追加したりして、自分好みに飲み物をカスタマイズすることができる。 Figure 2. 新式茶の多様な種類 出典:各種ブランドのWeChat ミニプログラム 2. 新式茶発展の過程 長年にわたり、新式茶業界は大きく成長し、現在では中国において消費者の関心が高いメインの市場となっている。 中国新茶飲料サプライチェーン白書 2024 (中国新茶饮供应链白皮书 2024)によると、1980年代から1990年代にかけて、タピオカティー・ミルクティーが台湾海峡を挟んだエリアで、若者たちに美味しくて手頃な価格の飲み物として提供され始め人気となった。2015年頃になると、HEYTEAや茶颜悦色(Sexy Tea)などのスタートアップ企業が、ティーパウダーやクリーマーの代わりに新鮮に抽出したお茶を使用して、ミルクティーを作り始め、高品質で風味豊かな体験を提供し始めた。この革新により、現在「新式茶」として知られるものが誕生した。 2022年までには、多数の大規模なチェーンブランドが製造および販売の分野に参入し、製品の品質だけでなく、ブランドのパッケージングやデザインを向上させた。その結果、顧客一人当たりの支出も大きく増加した。2023年からは、ブランドはサプライチェーンを合理化し、先進技術を活用することで新式茶を更にグレードアップしている。これにより、味、品質、新鮮さ、健康への配慮、透明性、そして費用対効果を向上させることが可能となり、さまざまな文化をお茶に融合させることで、ひとつの飲み物が消費者のライフスタイルに影響を与えることができるまで商品が成長したと言える。現在、中国全土に新式茶の多くのブランドが広がっており、その結果として、スターバックスのようなコーヒーブランドは多くの新式茶ブランドと競争しなくてはならず、スターバックスが中国で苦戦していると言われる理由の一つとなっている。 Figure 3. 2023年半ば頃における中国の美団プラットフォームにおけ飲料店数のシェア 出典: 中国新茶饮供应链白皮书 2024 3.…
by 鶴田 彬、2025.3.17 前回のブログでは、海外のビジネスパーソン向けに、日本の消費者は、食べ物や飲み物に控えめで自然な甘さを求め、過剰な砂糖を避けていることについて説明し、そのブログを日本語でも共有した。その中で、中国では主流の飲み物として定着化した新式茶・ニュースタイルティーのフルーツティー、とりわけHEYTEAのような高品質・健康志向のアプローチを取るブランドは、日本の消費者に歓迎される可能性があることを示唆した。そんな中、2025年2月、HEYTEAは大阪のDOTONプラザに日本初の店舗をオープンした。今回は、HEYTEAの紹介と日本でのマーケティング戦略について分析してみようと思う。(前回のブログはこちらから:“砂糖は嫌いだが甘さは好き”-ワガママな日本人消費者の好みにどう対応するか) Figure 1. 日本初のHEYTEAストアは大阪にオープン 1. HEYTEAについて Figure 2.HEYTEAの商品イメージ 日本人の多くはこのHEYTEAというブランドに馴染みがないだろうが、中国ではHEYTEAは新式茶・ニュースタイルティーのリーダーとして、市場に君臨しているといっても過言ではない。若手創業者の聂云宸(Nie Yunchen)氏によって、2012年より広東省江門市からスタートした(当時の名前は皇茶)中国茶をモダンスタイルで提供するブランドであり、パウダーなどは使用せず、店舗で茶葉からお茶を入れ良質の商品を提供することに重点を置いている。当初のターゲット層としては、20~30歳、特に20~25歳ホワイトカラーワーカーが想定されており、開発されたフルーツとチーズフォームをブレンドしたチーズティーが若い女性を中心に口コミで広がり2017年より店舗数を伸ばし一大ブームを巻き起こし、今や新式茶会のスターバックスと見られるほどに中国の市場に定着したブランドである。(余談だがCEO聂氏がスターバックスをベンチマークしていない点も面白い点である。) Figure 3. HEYTEAのチーズティーは、中国で一大ブームを巻き起こし行列を産んだ HEYTEAのブランドは、“Tea of Inspiration(灵感之茶)”をコンセプトに、文化体験を提供するブランドと位置付けることができ、現代と伝統の融合された革新的な商品・ストアデザインが若者に評判を受けている。また、一部で。「ミルクティーで時間を無駄にするデザイン会社」と冗談めかして呼ばれることもあり、マーケティングコンテンツのデザインに中国の美学、禅、ミニマリズム、レトロな要素を取り入れることで、幅広い若い消費者にアピールすることに成功し、現在、総店舗数は4,000店を超えている。また、最近、クオリティを維持するために2022年に開始したフランチャイズ展開を廃止したことでも話題に上がっている。 Figure 4. HEYTEAの革新的な商品ラインナップ 出典:HEYTEA GO WeChatミニプログラム 商品メニューを見れば、タピオカミルクティーに加え、チーズティーやフルーツティーなどバラエティに富み、HEYTEAの強みの一つが商品開発にあることがわかる。そんな、これまで日本市場で見られることとの無かったと言えるクオリティ重視の新式茶HEYTEAが日本で受け入れられる土壌があるのか見ていこう。 2. 中国市場とは勝手が違う 2-1.ライバルであるコーヒー文化の浸透度が異なる コーヒー文化が広まり、浸透度が深ければ深いほど、新式茶の市場参入は困難になる可能性があり、中国市場と日本市場の大きな違いはコーヒー文化の普及度、そのヒストリーにあるだろう。日本の消費者は、1960年代からコーヒーと長く付き合ってきたため、新式茶が日本で定着するのはより困難と考えられる。以前のブログ中国カフェチェーンの海外進出“Grab-and-Go”でシェア拡大を狙えでも述べたが、上海では、スターバックスがすでに市場に参入していたがコーヒーの市場への浸透度はLuckin Coffee登場まではそこまで強くなかったと感じており、私の教室では一点点のようなバブルティーがデリバリーで注文をよくされていた。(中国は、1999年に北京からスターバックスに参入したが、コーヒーをデイリーで飲み始めたのは、Luckin Coffeeなどが台頭してきた2020年前後と言えるだろう。)その後、Luckin Coffeeの登場で市場は変容していくのだが。上海の消費者の体感としては、Luckinのようなコーヒーチェーンと新式茶のスタンドがほぼ同時に登場したイメージであり、日本とは市場参入時の状況が異なる。HEYTEAは日本市場では、よりスターバックスやブルーボトルなどのカフェとの厳しい競争に直面することになるだろう。その点において、日本市場への参入は、中国や他のアジア地域よりも困難であるように思われ、ヨーロッパなどの西洋市場に近いものと考えられる。 2-2.そもそも味の好みが違う 中国人消費者と比べると、殊更お茶に関しては、日本の消費者は伝統的または単調な好みを持っていることが多く、中国の消費者ほど複雑にブレンドされた味に慣れていないと懸念されている。最近は上海で、多くの消費者が、烏龍茶ベース・ジャスミン茶ベースのミルクティーを飲むのだが、紅茶を除く中国茶や日本茶に牛乳や砂糖を入れて飲もうと言う習慣は、多くの日本人は持っていないと言えるだろう。そして、これは、チーズティーなどの革新的な製品を日本市場に導入する際に課題となる可能性がある。上海で、私は日本人の友人と初めてチーズティーに出会ったとき、最初はためらいを感じ、そのアイデアに少し違和感を覚えたし、チーズティーを自身のチョイスにすることから遠ざけていた。後に、中国人の友人の勧めで試してみると(私があまりにも躊躇うので身叶えて奢ってくれた。)、実際には非常においしいことがわかり、すぐにファンになったのが、この最初に商品をトライさせるコスト、他商品からこちらを選択させるスイッチングコストが日本では高くなるだろう。 Figure 5. Luckin Coffeeのジャスミンミルクティー(鲜萃轻轻茉莉) 2-3.…
By 钱 俞颖, 2025.01.21 前回の記事:海外在住外国人コミュニティ:“ディアスポラ”は海外進出の際のゲートウェイになるで少しローカライゼーションについて話しましたが、今回の記事はそのローカライゼーションに焦点を当てています。 日本人の方は、海外旅行をする際にまたは輸入食品を手にした際に、甘すぎると感じたことはないでしょうか? 本稿の記事は、飲食品産業に従事する中国人ビジネスパーソン向けに執筆したものになるのですが、中国人アナリストが日本市場の甘さに関する嗜好をどのように分析しているのかを理解することは、日本の飲料ブランド・飲食産業の方にとっても中国市場との違いを知る上で、何か気付きに繋がるのではないかと考え、日本語版をシェアすることにさせていただきました。ちなみに、執筆中にお米の甘みについて議論しましたが中国人スタッフは、その甘さを理解できず、しばらく噛むと、少し甘さを感じるといった日本人の話は伝わりませんでした。 以下、本文になります。お楽しみいただければと思います。 日本市場の無糖飲料の市場浸透率は中国市場の10倍 日本に行ったことがある外国人なら、自国のお店と比べて、日本のコンビニや自動販売機に無糖や低糖の飲み物が溢れていることに気づくことになる。日本人との会食では、飲酒を除けば、ほとんどの日本人男性は無糖の飲み物を選ぶ傾向がある。日本の砂糖入り飲料の市場シェアは、1980年以降減少し続けている一方で、無糖飲料の市場シェアは1980年の1%から2022年には54%へと急速に成長している。(参考までに比較すると中国における無糖飲料の市場シェアはわずか5%程度である。) アメリカ農務省(USDA)が2024年に発表した世界の砂糖消費量に関する報告書によると、日本の年間砂糖摂取量は1人当たり約14kg、中国は日本をわずかに上回る約16kg、欧州と米国は日本の 2〜3倍となっている。多くの日本人読者も感じておられるように、日本人の砂糖摂取量はほとんどの国よりも低いと結論づけることができる。(それでも14kgと言われるととてつもない量に感じられるのだが。) しかし、これは日本人が甘い食べ物・スイーツを好まないということでは全くない。 LINE Yahooが2024年に実施した15~64歳の日本人を対象としたスイーツに関する調査によると、日本人の90%以上がスイーツが好きと回答した。予想通りかもしれないが、Yesと答えた回答者の中では、男性よりも女性の割合が高く、10~30歳の若者の方が60代の中高年よりもスイーツを好むという結果が出た。 海外旅行などをしていると感じられると思うが、それぞれ国によって消費者の味覚は異なる。そして、それはその国の食文化と密接に関係している。私が上海で出会った日本人の多くは、上海料理や中国のミルクティー、デザートは甘すぎると言っていた。(上海料理については私も甘いと思う。)近年、Hey Teaなどの多くの中国の茶飲料ブランドが海外に進出しており、日本の消費者の嗜好を理解することが対日輸出向け商品の開発となって重要となっている。この記事では、中国の茶飲料を日本に輸出する際に、どのようにローカライズするかについてのヒントを与えられるように、日本のスイーツ・飲料市場についての私見を綴ろうと思う。 日本人は甘味に非常に敏感であり、60%以上の日本人は、“ほんのり甘い”食べ物を好む それぞれの国の人々によって「甘さ」に対する認識は異なる。オックスフォード大学の研究によると、日本人は甘味に対して特に敏感で、糖類などを大量に摂取しなくても甘味を感じられるということだ。これは日本人が子供の頃から微かに甘い味(米やみりんなど)に慣れ親しんできたことと関係があり、古代から現代の日本人の食生活にも同様の食習慣が受け継がれている。一方で、日本のメディアは長年にわたり糖尿病予防を推進し、「砂糖を摂りすぎると糖尿病になりやすい」という健康意識の種を日本人の心に植え付けてきた。 では、日本人は砂糖に対してどの程度敏感なのだろうか?飲食業界が実施した調査によると、中国人の約10%がブラックコーヒーを選ぶという、一方で、日本では、オンライン調査によると、63.5%以上の人がブラックコーヒーと無糖のお茶を選ぶことがわかった。 「砂糖・糖分の摂取に関して、最も気を付けていることは何ですか?」というアンケートでは、「糖分の少ない商品を選ぶ」を選んだ回答者が全体の39.9%であった。次いで「砂糖・砂糖分の多い食品・飲料を避ける」(26.3%)、「食品・飲料に一定量の砂糖・砂糖が添加されるのを避ける」(21.6%)となった。日本の無糖派は中国よりはるかに多いことがわかる。 Figure 1. 日本人消費者を対象にした糖分の摂取に関するアンケート結果 また、別の調査において、多くの方が人工甘味料に関する安全性を正確に理解していないこともあり、人工甘味料を好まないと回答したことは注目に値する。では、日本人にとって「低糖質・ほんのり甘い」食べ物とはどのような食べ物なのだろうか?それは、例えば、杏仁豆腐、ギリシャヨーグルト、パイナップルケーキ、そして以下に挙げる果物といった、それぞれ自然な甘みが含まれたものが該当するだろう。 Figure 2. 安宁(杏仁)豆腐 photo from: PROFOODS 外国企業は日本の消費者の甘味嗜好にどう適応すべきか?製品をローカライズするにはどうすればいいか? 1. 天然素材の自然な甘さを活用 日本人の消費者は甘いものは体に悪いという感覚を持っている、一方で甘いものは嫌いではない。要は、甘みは取りたいが砂糖は取りたくないのである。それを理解した上で商品をローカライズしていくことが重要でろう。そこで、日本では、砂糖の量を減らした上で甘さを維持するために、自然の素材の甘みに焦点を当て商品を開発するケースがある。小豆、黒ゴマ、栗などの原料に含まれる天然の糖分はほんのりと甘く、日本人の目から見ると健康的で糖尿病の原因にもならず、美容にもよいとされている。これらは日本人にとって馴染み深い食材であり、日本のデザートにもよく登場している。(小豆などの場合は砂糖が多く添加されていることもあるが。)通常砂糖を多く使用する和菓子屋でさえも、自然の豆の甘さを引き立て、砂糖の使用量を制限する和菓子を開発し始めている。 日本茶そのものの自然な甘さを商品解決に生かしているケースもある。例えば、日本のスターバックスで長く消費者に親しまれているほうじ茶ラテは、その例に当たるであろう。ほうじ茶ラテは、「優しい甘いお茶」と評されている。そのほろ苦さは控えめであるが、同時に豊かな甘い香りが漂う。さっぱりとしていて飲みやすく、とてもリラックスした気分にさせてくれる。通常のほうじ茶ラテには、シロップが入っているが、日本のカスタマーの中には、ほうじ茶そのもののほのかな甘さを楽しむためにシロップ抜きを好む人もいる。 Figure 3. スターバックスのほうじ茶ラテ (スターバックスジャパンウェブサイトより)…
By 鶴田 彬, 2025.01.13 はじめに 上海で新生活を始めたとき、私には友人がおらず、中国での食事にもあまり馴染みがなっかたので、多くのクラスメイトが親切に接してくれたにも関わらず、時々少し寂しさを感じていた。また、食べ物や衣服などの品物を注文・購入する際に、どの料理やブランドが自分に合っているのかを判断するのが難しかった。なので、最初の1週間のうちにキャンパス近くにあるユニクロを訪れ、必要な衣類を購入したのを記憶している。また、キャンパスライフを送る中で上海における日本人街として知られる古北地区を訪れ、日本食を楽しむことも多々あった。浦東の寮から古北に行くのに凡そ1時間以上かかったが、そこで得られる経験には価値があった。なぜなら、そのエリアは日本の小さな町の雰囲気をいくらか捉えていてくれて、日本のスーパーマーケットを訪れるたびに、懐かしい、ノスタルジックな気持ちに浸りながら、幼い頃から馴染みのある日本食品のスナック菓子や飲み物を眺めながら小一時間費やすことがよくあった。そのため、必要以上に、日本より価格は割高になるのに、商品を買ってしまうこともよくあった。また、以前は日本のアニメをあまり見ていなかったのだが、日本語の、日本的な会話のやり取りなどを楽しむために見るようになった。さらにはYOASOBIなどの日本のポップソングを頻繁に聞くようになった。 Figure 1.日本料理店が集中する日本人街の建物 上海での生活に慣れた後も、私は古北を訪れ、新しい日本食レストランを見つけたり、子供の頃に楽しんだ漫画やお菓子など懐かしいものを探したりすることが良い気晴らしになっていた。特に自分の故郷である大阪や京都などの関西エリアの日本文化を味わいたいという欲求を感じることがある。 私が経験したように、母国や故郷を離れた多くの人々はこのような感情を共有し、”故郷の味、ホームテイスト、Taste of Home“を求めているのは確かであろう。そして、これらの消費者を、とりわけ”Diaspora、ディアスポラ“と呼ばれる彼らが集まるコミュニティ・地域において、ターゲットにすることでビジネスに商機が生まれる可能性がある。グローバル化の時代において、海外に移住する人が増えるにつれ、母国の企業が新しい市場・海外市場に進出するためには、海外に移住した人々をターゲットにするマーケティング戦略が必須の戦略であろう。この記事では、ディアスポラマーケティングを説明、いくつかの成功事例を紹介し、ディアスポラをターゲットにすることから、その地でのローカル市場へどのように拡大していくかを探りたいと思う。 ディアスポラマーケティング(Diaspora Marketing) ディアスポラマーケティングは、チャイナタウンやリトルインディアとして知られる地域など、出身国以外に住む移民コミュニティをターゲットにした戦略である。受け入れ側のホストカントリーと母国側のホームカントリーとの間の文化の違いを含む、有形および無形のギャップに対処することで、商品・サービスの価値を強調し提供するマーケティングである。特に、いわゆる人々が、懐かしさを感じる商品は、このアプローチを効果的に活用できる。たとえば、上海の日本人街として知られる古北には、ラーメン屋がたくさんある。この地域は、日本の消費者が頻繁に訪れ居住することもあるため、レッドオーシャンになりつつあるものの、日本企業、特に日本の中小企業にとって、飲食店をオープンするのに最も低リスクな場所と考えられている。小規模なビジネスを行う上で、ディアスポラマーケティングは、初期マーケティングコストを抑えられる優れた戦略である。しかし、ディアスポラコミュニティの消費者から、ターゲットを現地市場に拡大する場合、コミュニティにおける全てのタイプの消費者が母国のブランドにとって理想的な顧客であるとは限らないと言われている。以下は、Harvard Business ReviewでNirmalya Kumar氏と Jan-Benedict E.M. Steenkamp氏が提案した顧客セグメンテーションマトリックスである。 Figure 2. ディアスポラ市場のターゲット顧客セグメント 出典: Harvard Business Review. Diaspora Marketing 手短にいうと、上記のセグメントの中で、企業はBiculturals(バイカルチュラル、二文化主義者)とEthnic Affirmers(民族肯定者)をターゲットにすることに重点を置く必要がある。特に、Biculturalsは、ディアスポラ市場(ホストカントリー)とホームカントリー市場の間のギャップを埋める、橋渡しをする上で重要な役割を果たすことができる。ホストカントリーとホームカントリーの双方の文化やブランドに寛容なBiculturalsは、例えば、中国人やその他の外国人の友人に、日本(ホームカントリー)のブランドを紹介するといったような自国文化を紹介する傾向が高い。 (私自身もこのセグメントに属していると感じている。)これにより、ローカル市場(ホストカントリー市場)で、口コミが生まれ話題となり、母国のブランドにおける新しい市場での認知度や人気を高めることにつながる。 多くの製品またはサービスカテゴリでディアスポラマーケティングを活用することできる。特に、食品・飲料、ファッション、化粧品、教育サービス、医療サービス、映画ストリーミングなどのエンターテインメントサービスなどが適した商品カテゴリーと考えられよう。さらに、このアプローチは、現地の消費者に正当な理由なく品質が低いと認識されることが多い発展途上国の製品・サービスが先進国市場に参入する際に特に効果的となる。 Jollibee (ジョリビー) ディアスポラ・マーケティングについて議論するとき、フィリピンで最も人気のあるファストフードチェーンであるJollibee (ジョリビー) について言及することは不可欠であろう。チキンジョイとバナナケチャップを用いたジョリースパゲッティで有名なファストフードブランドである。フィリピン国外では、地理的制限や文化的・人種的障壁により、フィリピン料理にアクセスするのが難しい場合がある。本物のフィリピンの味を提供し、フィリピン文化を讃え、懐かしさと一体感を呼び起こすことで、このブランドは、世界中のフィリピン人コミュニティの顧客と深い感情的なつながりを築くことに成功した。ジョリビーは、フィリピンに加え、ベトナム、米国、カナダ、UAE、シンガポールなど、海外在住フィリピン人が多い国に、複数の店舗を構えている。 Figure…
By Qian Yuying, Akira Tsuruta, 2025.01.08 Triunityは、英語のポッドキャストを始めました!海外の市場における各業界の専門家などに随時インタビューをして、海外の第一線産業に関する詳細な情報をお届けします。ポッドキャストは基本的に英語になりますが、以下の記事で要点をまとめていますので、リスニングと同時に記事もお楽しみください。 BIPV市場のその可能性 (シンガポール、日本、中国、オーストラリア)by Triunity, 22 分 (in English) ゲストスピーカー ティアンイ・チェン博士(Dr. Tianyi Chen)、シンガポール国立大学所属 こちらのエピソードでは、シンガポール国立大学博士課程のティアンイ・チェン博士(Dr. Tianyi Chen)を特別ゲストとして招き、シンガポール、中国、オーストラリア、日本におけるBIPV(建材一体型太陽光発電)の市場展望と参入ポイントについて詳しく議論しました。チェン博士は、シンガポール国立大学の建築学の博士号を取得、シンガポール太陽エネルギー研究所の研究者であり、古木造建築物向けの太陽光発電プロジェクトの重要なメンバーである。同時に、シンガポールに自身の太陽光発電会社Power Facadeを設立し、プレハブ式カラー太陽光発電パネルの設計と生産を行っています。(https://www.powerfacade.net/)国内外を問わずBIPV市場に参入し、競争の激しい市場でリーディングポジションを維持したいと考えている BIPVサプライヤー、インテグレーター、投資家にとって必聴のエピソードとなっています。 今エピソードの内容:4つのキーポイント 01 シンガポール: 政府はプレハブBIPVを精力的に推進しており、カラー太陽光発電パネルの市場の見通しは良好 (注釈: ただし、現在のシンガポールにおけるBIPVの防火要件は比較的厳しい) シンガポールのBIPV市場についてどう思いますか? チェン博士:シンガポールは BIPVに対して非常に厳しい防火認定の取得を課しているため、シンガポール市場は非常に重要だと思っています。一度ここで認定を取得すれば、他の市場にも進出できるようになります。太陽光発電を紹介するのに非常に良い国と考えられ、政府も企業もこの市場に大きな注目を集めていることでしょう。 シンガポールではBCAなどの政府機関がプレハブ建築を推進しています。シンガポールでは、地震や洪水の問題がないため3Dモジュール式建物が非常に人気があります。その理由は、3Dモジュール式建物は、オフサイトで事前に完成させ設置できるため、シンガポールで将来的に非常に高額となる人件費を節約できます。また、私は関連する他のスタートアップのオーナーも何人か知っていますが彼らは、例えばシンガポールで実証を行って、ベトナムやタイで製品を応用しようとしています。 シンガポールは、グリーンビルディングとネットゼロビルディングのリーダーであり、多くのビルには垂直緑化や屋上太陽光発電が導入されている。これらの技術の中で、BIPVは近年の新しいパッシブ設計に当たると思われます。現在シンガポールではどのように使われているのでしょうか?シンガポールに BIPV建物の例はありますか? チェン博士:現在シンガポールで、多くの人からこのような、「BIPV製品はありますか?」、または、「既存のBIPV建物はありますか?」といったような質問を受けますが、実際には、建物のファサードに太陽光発電を設置する事例はまだ十分ではありません。 2022年9月以降、シンガポール消防署 (SCDF) は、新しい厳格な火災安全規制を発行しました。したがって、太陽光発電パネルの設置は、IECおよびISOの規制だけでなくシンガポールSCDFの現地の火災安全規制にも適合する必要があります。そのため、1 年半が経過した現在まで、火災安全規制を遵守できたのは、中来木(苏州)光伏有限公司…
by 鶴田 彬, 2024.10.25 はじめに:様変わりした中国のコーヒー事情 私が2017年に、ビジネススクールに留学する為、上海へと渡航する際に、日本人の先輩学生が日本からインスタントコーヒーを持ってくるといいよと勧めてくれた。理由としては、日本でインスタントコーヒーを購入する方が、中国で購入するよりコストを抑えられたからだ。また、キャンパス付近に、カフェチェーン店はスターバックスしかなく、一杯あたり30-40元(約600-800円)したので、懐事情の厳しい私費留学生にとってなかなか手が出せないものであった。2017年の夏頃の上海では、日本同様にタピオカティーブームが起こっており、グループワークの最中にクラスメイトがよくデリバリーで注文していたのを覚えている。しかし、2018年にLuckin Coffee (ラッキンコーヒー)の登場が、彼ら彼女らの習慣に変化を与えることになった。キャンパス生活2年目に突入する頃、授業中にクラスメイトからメッセージが送られてきて、Luckin Coffeeのグループ注文に参加するかしないかを聞かれた。これが、私のLuckin Coffeeとの初めての出会いであり、グループオーダーのディスカウントを使用することで、一杯あたりの価格が10−20元(約200-400円)になった。それ以降、価格が下がったことで、以前より頻繁にコーヒーを注文するようになり、ラテやアメリカーノを、授業中に注文し休憩時間に配達を受け取るといったスタイルが確立した。 市場全体を見てみるとデータは様々であるものの、CBNデータによると、中国で調査を実施した対象において、多くの消費者が、現在、週に1回コーヒーを飲んでおり、約25%が毎日少なくとも1杯のコーヒーを楽しんでいると報告されている。そして、中国の消費者は、コーヒーを単なる眠気覚ましといった機能的な飲み物としてではなく、喜びの源として捉えるようになりつつあり、中国の消費者にとって今後ますますコーヒーがリラックスの手段として広がりを見せていくだろうと報告されている。 Figure 1. 中国における消費者のコーヒー飲用頻度 Data source: CBNData 2023 April coffee drinker survey, “How often do you drink coffee in the past six months?” そして、私は、卒業後も上海に残ることになるのだが、それからより多くのカフェチェーンを目にすることになった。美団データによると、2023年において、上海には8,530店舗のカフェがあり、世界で最もカフェが多い街となっている。Luckin Coffeeやスターバックスだけでなく、Manner Coffee(マナーコーヒー)やCotti Coffee (コッティコーヒー)が私たちの目に飛び込んできた。 Figure 2. 2021-2023年における中国本土のコーヒーショップ数推移…
by 钱 俞颖、2024年9月30日 キーポイント タイといえば、金色に輝くお寺、にぎやかな夜市や、絶えない各国の観光客を思い浮かべる人も多いだろう。私たちのイメージでは、タイはどこも活気にあふれている。しかし、意外なことに、タイは現在、中度高齢化社会に入っており、年齢の中央値は39歳で、ASEANではシンガポールの42歳に次ぐ高齢国だ。言い換えると、人口ボーナスが徐々に消え、経済が停滞し始めている。活発な表現とは裏腹に、転換を急ぐタイ経済が、そこにはある。 それでも、人口規模が大きく、消費力が強く、オンラインルートが比較的成熟しているため、地政学的リスクを回避することに基づいても、タイは依然として企業が東南アジアに進出する上で、第一選択の目的地の一つと言える。本文は私達のタイに対する研究と洞察に基づいて、経済発展の転換の角度からタイ市場の特徴と投資機会を整理する。 生暖かいタイ経済、改革が進む時 IMFのデータによると、2023年のタイのGDPは約5,150億ドルで、世界25位となり、インドネシアに次ぐASEAN2位の経済規模を持つ。しかし、2015年から現在まで、タイのGDPの平均成長率は1.9%前後で、マレーシアの3.9%、インドネシアの4.2%、ベトナムの7%を下回っており、ASEANの平均値4%を下回り、ASEANの中で経済成長が最も緩やかな国の一つである。 経済構造は比較的多様だが、タイ経済は国際市場に依存し過ぎており、タイの輸出はGDPの約65%を占めている。コロナ禍で、貿易、観光業が阻害され、タイのGDP成長率は6.1%低下し、いまだコロナ発生前の水準に回復しておらず、ASEAN諸国の中で経済の停滞が最も深刻な国の一つである。さらに深刻な人口高齢化も合わさって、タイ政府も着実に焦り始めていると見え、タイ経済発展の新たなエンジンを構築することを急がなければならない状況である。 そこで、タイ政府は東部経済回廊計画(EEC)とタイランド4.0戦略を通し経済の転換を模索している。単純な農業、生産製造からハイテク、新エネルギー、高付加価値サービスなどの産業に転換したい考えだ。これらの産業は、外資企業にとって比較的有利な産業であると言えよう。タイ投資促進局(BOI)が発表した10大外資誘致分野では、外資企業に対して、課税、土地所有権、ビザの利便性、外貨送金などにおいて、一連の優遇を提供している。 改革の下でどのような機会が訪れるのか? この記事では、2 つの領域を選択して紹介しようと思う。 バイオマスエネルギー タイは、ASEAN諸国の中で最も電力消費量が多い国で、エネルギーの純輸入国であり、他国からのエネルギー輸入に大きく依存している。地元の炭鉱や石油資源は乏しく、天然ガス資源は豊富だが、継続的な開発により埋蔵量は大幅に減少している。2022年には、タイは天然ガスの約38%、石油の約92%を輸入する予定と報告されている。主要なエネルギー源(総エネルギー消費量の68%を天然ガスが占める)である、国内の天然ガス生産量の減少により、現在、タイは再生可能エネルギーの開発に積極的に取り組んでおり、タイ政府は総消費量に占める非水力再生可能エネルギーの割合を2036年までに30%に増やす計画を立てている(2022年には約13.8%となる)。 タイの風力発電と地熱エネルギー資源は豊富ではないので、太陽光発電に加えて、バイオマスエネルギーについて言及する必要がある。タイ自体は大規模な農業国であり、広大な農地と森林地帯があり、多数の米、サトウキビ、キャッサバ、アブラヤシ、ヤシの木が栽培されている。さらに、政府による不動産開発の活発化により、大量の都市ゴミ(MSW)も重要なバイオマスエネルギー源の一つとなっている。政府は、年間4,000万トンのバイオマス原料が利用できると推定しており、安価なバイオマスが大量に得られるため、タイではバイオエネルギー発電が再生可能エネルギー発電の最大の割合を占めており、太陽光発電の約3倍となっている。 中国企業に関して言えば、バイオマス発電やバイオガス発電を開発しており、これらの中国企業は既にタイ市場に参入している。 2007年以来、杭州锦江、中国电工、三峰环境、華西能源(华西能源)、云南水务などの中国企業がタイの廃棄物発電プロジェクトへの投資に参加している。 2022年においては、中国能建がタイの製糖工場とバイオマス発電所を統合する包括的なプロジェクトに署名した。 しかし、政策を見るに、タイ政府が外国投資を誘致したいのは、非発電型バイオマス利用である。タイ投資委員会(BOI)は、バイオテクノロジー産業を投資を奨励する産業として挙げており、BOIが発行した投資促進プロジェクト申請ガイド2023によると、「バイオマス液体燃料、バイオマス成型固体燃料、バイオプラスチックを生産するA2企業には優先的な投資権益が与えられる」とされ、8年間の法人所得税及び機械原材料の輸入税の免除、その他税金以外にも優遇権利や利益を享受できる。 バイオ燃料の分野では、中国のハルビン電気国際社(哈电国际)がタイのキャピタル・ワン・エンタープライズ社とチャチューンサオ県パノムサラカム地区に年間生産量1,420万リットルのキャッサバベースのエタノールプラントと100MW複合サイクル発電所を建設するEPC契約を締結した。また、日本のビール会社サッポロホールディングスは、タイのPTGエナジーに第1.5世代キャッサババイオエタノールの生産をする上で技術供与している。さらに、住友商事は、サトウキビバガスを原料として使用するバイオエタノール(E2G)生産プラントを2025年までに建設する予定である。 タイは、2026 年から持続可能な航空燃料(SAF)の使用量を総燃料消費量の1%に増やす計画を持っており、SAF生産のためのG+FtおよびAtJの生産経路は、タイでより多くのアドバンテージを持っていると考えられる。ただ、現時点においては、タイのほとんどのSAFプロジェクトは、他地域同様に、使用済み燃料・食用油を使用したHEFA生産経路を利用しており、 地元石油会社Bangchakは 2022年にSAFの試験運用を開始し今年中には商業運転を達成する予定である。 Bangchakより では、バイオプラスチックに目を向けてみよう。現在、タイは世界で第2位のバイオプラスチック生産国であり、その内バイオプラスチックの90% がイタリア、オランダ、日本、韓国、米国などの国々に輸出されている。タイは、ASEANにおけるバイオプラスチックの中心地となることに尽力しており、その年間プラスチック生産量は約95,000トンに上り、地元メーカー達は、今後数年間で、さらに75,000トンの生産量を増加する予定であると、タイがバイオプラスチックペレットの年間生産量の増加を目指していることが明らかになった。今後、生産量は数年間で375,000~400,000トンに増加する見込みである。 そんな中、海外企業の活躍も見られる。2018年、Total社が50%、Corbion社が50%出資する合弁会社Total Corbion PLAは、ラヨーン県のバイオプラスチック工場での生産を正式に開始すると発表した。このプロジェクは、現在、タイ最大のバイオプラスチックプロジェクトであり、サトウキビシロップを原料として使用し、年間75,000トンのポリ乳酸(PLA)の生産能力を持つ。さらに、ブラジルのバイオプラスチック大手Braskemは、タイの化学会社SCGと合弁会社を設立し、数年以内に年間生産能力20万トンのバイオエチレン生産プラントを建設する計画である。 Vietnam Plusより バイオマスはエネルギー密度が低いため、原料の収集距離を一定範囲内に収めることができないと、収集、加工、輸送コストが高くつくという欠点を持つ。裏を返すと、今後、供給と輸送の問題が解決できれば、タイのバイオマスエネルギーの潜在力はさらに発展する可能性がある。 ヘルスケアと医薬品 タイの現在のヘルスケア・医療市場の特徴には、主に医療ツーリズム、美容外科、美容医療、生殖補助医療、革新的医薬品の臨床試験などが含まれる。BOI の「投資ガイド2023」によると、高品質の医療の生産に携わる企業が含まれ、ハイテク医療機器、医薬品有効成分(API)、標的治療薬、専門医療センターは、法人税の8年間の免除、機械や原材料の輸入税の免除や、その他の税金以外の優遇措置としてA2企業投資奨励金を享受できる。 中国の革新的医薬品会社Junshi Bioscience,の李寧(李宁)副会長へのインタビューによると、現在、東南アジア市場には革新的な医薬品が比較的少なく、東南アジアで欧米企業が販売する医薬品は主にジェネリック医薬品であり、全体としてはジェネリック医薬品が主流となっている。その結果、一部の中国の製薬会社は、東南アジアで比較的手頃な価格で革新的な医薬品を発売する前に、ヨーロッパと米国で高水準の登録を完了することを選択している。また、東南アジアの一部の国では、漢方薬の認知度が高く、2022年には上海医药がタイのバンコクに会社を設立し、医療機器や革新的な医薬品、バイオ医薬品をタイ国内に導入している。昨年、Junshi Bioscienceは、Kanglindaと合弁会社を設立し、タイおよび他のASEAN諸国8カ国でPD-1モノクローナル抗体の開発と商業化に協力している。PD-1モノクローナル抗体は主に、感染率の高い上咽頭癌の治療に使用される。加えて、今年6月、アストラゼネカは、NCDsへの取り組みに重点を置いた生物医学イノベーションを推進するため、2024年から2026年までの今後3年間でタイに約62億バーツ(約1億6,850万米ドル)を投資すると発表した。…