by 鶴田 彬, 2024.10.25 はじめに:様変わりした中国のコーヒー事情 私が2017年に、ビジネススクールに留学する為、上海へと渡航する際に、日本人の先輩学生が日本からインスタントコーヒーを持ってくるといいよと勧めてくれた。理由としては、日本でインスタントコーヒーを購入する方が、中国で購入するよりコストを抑えられたからだ。また、キャンパス付近に、カフェチェーン店はスターバックスしかなく、一杯あたり30-40元(約600-800円)したので、懐事情の厳しい私費留学生にとってなかなか手が出せないものであった。2017年の夏頃の上海では、日本同様にタピオカティーブームが起こっており、グループワークの最中にクラスメイトがよくデリバリーで注文していたのを覚えている。しかし、2018年にLuckin Coffee (ラッキンコーヒー)の登場が、彼ら彼女らの習慣に変化を与えることになった。キャンパス生活2年目に突入する頃、授業中にクラスメイトからメッセージが送られてきて、Luckin Coffeeのグループ注文に参加するかしないかを聞かれた。これが、私のLuckin Coffeeとの初めての出会いであり、グループオーダーのディスカウントを使用することで、一杯あたりの価格が10−20元(約200-400円)になった。それ以降、価格が下がったことで、以前より頻繁にコーヒーを注文するようになり、ラテやアメリカーノを、授業中に注文し休憩時間に配達を受け取るといったスタイルが確立した。 市場全体を見てみるとデータは様々であるものの、CBNデータによると、中国で調査を実施した対象において、多くの消費者が、現在、週に1回コーヒーを飲んでおり、約25%が毎日少なくとも1杯のコーヒーを楽しんでいると報告されている。そして、中国の消費者は、コーヒーを単なる眠気覚ましといった機能的な飲み物としてではなく、喜びの源として捉えるようになりつつあり、中国の消費者にとって今後ますますコーヒーがリラックスの手段として広がりを見せていくだろうと報告されている。 Figure 1. 中国における消費者のコーヒー飲用頻度 Data source: CBNData 2023 April coffee drinker survey, “How often do you drink coffee in the past six months?” そして、私は、卒業後も上海に残ることになるのだが、それからより多くのカフェチェーンを目にすることになった。美団データによると、2023年において、上海には8,530店舗のカフェがあり、世界で最もカフェが多い街となっている。Luckin Coffeeやスターバックスだけでなく、Manner Coffee(マナーコーヒー)やCotti Coffee (コッティコーヒー)が私たちの目に飛び込んできた。 Figure 2. 2021-2023年における中国本土のコーヒーショップ数推移…